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バイオエタノールと食料危機

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【バイオ燃料】エタノール製造が世界中で食品価格をさらに吊り上げる
ワールドウォッチング 2008/01 より
平成20年4月15日 ワールドウォッチジャパン転載承認済み

 歴史的な悲劇の始まりだ。穀物をガソリンに転換することで石油供給不安を緩和するという的外れな努力をするアメリカが、歴史上稀に見る規模の世界的食料不安を生み出している。
穀物および大豆価格は市場最高値を付けている。かつてない深刻な食品インフレに世界は直面しているのだ。シカゴ商品取引所では12月17日、小麦の取引価格が初めて1ブッシェル=10ドルを突破した。1月中旬のトウモロコシは史上最高値に迫る1ブッシェル=5ドル強で取引され、1月11日には大豆の取引価格が1ブッシェル=13ドル42セントと過去最高値を記録した。どれも1、2年前の2倍に当たる価格だ。
その結果、それらの穀物から直接作られるパンやパスタ、トルティーヤといった食品に加えて間接的に生産される豚肉や鶏肉、牛肉、牛乳、卵といった食品も、世界のいたるところで値上がりしている。メキシコでは、トウモロコシの粗挽き粉であるコーンミールの価格が60パーセント上昇している。パキスタンでは小麦粉価格が2倍になり、中国ではここ数十年で最も深刻な食品インフレが起こっている。
先進国では、食品価格に占める加工・流通費が、直接的な打撃を吸収している。とはいえ、主食品の価格上昇は続いている。2007年末の時点で、アメリカ国内における全粒小麦粉パン1斤の価格は12パーセント、ミルクは29パーセント、卵は36パーセントそれぞれ上昇した。また、イタリアではパスタ価格が20パーセント上昇した
 第二次世界大戦以降の期間中で世界の穀物価格が高騰した時期が3度ある。全て天候不順による不作が原因だったが、今回は違う。需要に供給がまったく追いついていないのだ。過去8年間のうちで、供給が需要を満たしたのはわずか1年でしかない。不足分は穀物在庫を切り崩して補われた。しかし現在の在庫(新たな収穫時期が始まるときにある貯蔵量)では、世界消費量を54日間しか満たすことができない。これは史上最低の在庫率だ。
 穀物消費量に関して言えば、1990年から2005年までは、人口増や穀物飼料から生産される動物性食品の増加が主な要因となって、年率平均2100万トンの上昇率が続いていた。そこへエタノール蒸留用穀物需要の爆発的な増加が起きた。2006年には5400万トンだった穀物消費量が2007年には8100万トンと大幅に増えている。現在建設中の62箇所の蒸留所のうち80パーセントが2008年末までに完成した場合、自動車用燃料を生産するために使用される穀物量は、アメリカの穀物生産高の予測値の28パーセントに相当する1億1400万トンにまで増大するだろう。
これまで、食料経済とエネルギー経済は、ほぼ独立した個々のものとして存在してきた。それが今、融合し始めている。燃料製造のためのエタノール蒸留所が次々と誕生してきていることがその原因だ。エネルギー用としての価値が、食料用としての価値より高いとなれば、市場は穀物をエネルギー経済へ移すだろう。そうなれば石油価格の上昇に追随して穀物価格も上昇する。
 イリノイ大学経済チームの算出によると、石油価格が1バレル50ドルなら、エタノール補助金が1ガロン当たり51セント(トウモロコシ1ブッシェル当たり1ドル43セントに相当)支給されることも考慮して、トウモロコシ・エタノール生産で利益を出すためにはトウモロコシ価格が1ブッシェル=4ドル以下でなければならない。しかし石油価格が1バレル100ドルであれば、トウモロコシを1ブッシェル当たり7ドル以上で買い取ってもなおエタノール蒸留所に赤字は出ない。仮に石油価格が140ドルまで上昇すれば、エタノール蒸留所はトウモロコシ1ブッシェル当たりに10ドル支払うことも可能だ。1ブッシェル=5ドルだった2008年の年初の倍額での買い取りが可能になる。
 世界銀行は、食品価格が1パーセント上昇するごとに、貧困者のカロリー摂取量が0.5パーセント減ると報告している。この地球上で日々、ぎりぎりの生活を営む経済的地位の低い何百万人もの人々が意欲を失い、脱落し始めるのではないか。
 ミネソタ大学のフォード・ランゲ教授およびベンジャミン・セナウアー教授は4年前、8億人余りいる空腹や栄養失調の状態にある人の数は2025年までに6億2500万人にまで減ると予測していた。しかし2007年初めの最新発表では、バイオ燃料が世界の食品価格に及ぼす影響も考慮され、空腹状態にある人の数は2025年までに10億2千万人に増加するだろうと予測している。増加傾向はすでに始まっているということだ。
 国際的な食料援助機関では、十分な時間的余裕を持って予算が設定されるため、食品価格の高騰はすなわち食糧援助の縮小を意味する。現在世界37カ国で緊急食料援助活動を展開している国連世界食料計画(WFP)は、食品価格高騰のあおりを受けて支援量を削減している。WFPの報告によると、1日18000人の子供たちが飢えやそれに関係する疾病で命を落としている。
 穀物価格の上昇を背景に、食料不足をめぐる政治が浮上してきた。輸出国が自国の国内食品価格上昇に歯止めをかけるべく輸出制限を課し始めたのだ。1月終わり、世界トップ5に入る小麦輸出国のロシアは、効果的な輸出禁止策として小麦に40パーセントの輸出税を課した。もう一つの世界的小麦輸出国アルゼンチンでは、12月初旬に講じた小麦の輸出登録の停止措置を、次の収穫状況の見通しが立つまでは無期限延長とした。タイに次いで世界第二位のコメ輸出国ベトナムは、数ヶ月間コメの輸出を禁止している。おそらく、作況が明らかになるまで禁止は解除されないだろう。
 食品価格上昇は社会不安へと反映されている。2007年1月にメキシコで始まったトルティーヤ価格高騰に対するデモに始まり、イタリアではパスタ抗議デモが起こった。最近パキスタンは、パン価格高騰が一因となる社会不安に陥った。インドネシアでは1月14日に首都ジャカルタで大統領官邸前に集まった1万人が、大豆価格が2倍になったことへの抗議デモを行った。大豆から作られるこの国の代表的な高タンパク質食物、テンペの価格が上昇を続けている。食用油の価格が急騰している中国の重慶では、あるスーパーが食用油の安売りをしたところ、開店と同時に客がなだれ込み3人が死亡、31人が負傷した。
 食品価格が上昇し始める前からすでに増え始めていたがアフガニスタンやソマリア、スーダン、コンゴ共和国、ハイチといった破たんしつつある国家の数は、経済的圧力が政治的圧力へと変わって行く時代の中で、さらに加速して増えるかもしれない。
食料面に関して、懸念すべきことは多い。穀物在庫は過去最低量となり、穀物価格は史上最高値を更新し、昨年に大豆からトウモロコシに転作した数百万エーカーが大豆畑に再度戻されることでアメリカの総穀物生産量が落ちむと予想され、新たに7000万人への食料供給が必要となり、一方でアメリカ国内で今年完成する新エタノール蒸留所用の3300万トン余りの穀物を蒸留業者たちが欲する、という新しい穀物時代へと我々は突入している。トウモロコシの先物相場の2008年12月引渡価格は3月の価格を越えた。市場アナリストたちが次の収穫以降、需給逼迫がさらに進むとみていることを示唆している。
これまでの世界的穀物価格の高騰は、天候不順に起因するものだったが、今回の状況は政府の政策に原因がある。従って政策調整で対応も可能になってくる。穀物燃料計画が実行しても、現在のアメリカ国内のガソリン総需要量の3パーセントを越える程度の供給しかできない。貧しい人々に苦難を強いたり、政治的混乱をもたらしてまで、実行すべきほどの計画ではないということは明らかだ。アメリカで生産された全穀物がエタノールに転換されたとしても、エタノールで満たされるガソリン需要は、全需要量のわずか18パーセントを越えるにとどまるだろう。
 皮肉なことだが、アメリカの人たちは納税という形で政府のエタノール政策を援助していることになり、これが事実上、食卓に並ぶ食品価格を押し上げている。食物を燃料に転換する政策に手を貸すのを止めよう。世界の食料事情の悪化スパイラルが食い止められなくなる前に、速やかに行動に移すべき時が来た。
2008/1


ワールドウォッチジャパン環境問題へのリンクです



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